第58回日本透析医学会学術集会・総会に参加しました。

第58回日本透析医学会学術集会が、6月21日(金)~23日(日)の3日間、福岡県博多市で開催されました。
当院から「当院におけるエポエチンκ(BS)の使用経験」「当院における運動療法の取り組み 第1報」「当院における運動療法の取り組み 第2報車いすから自立歩行に至った症例」として計3演題の発表をしました。
内容は従来品エリスロポエチン製剤からの切替え効果の検討と当院の運動療法定着方法の紹介並びに運動療法成功体験の症例発表です。今回の発表を今後の透析医療に反映させて行きたいと思っています。

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当院におけるエポエチンκ(BS)の使用経験
(医)開生会奥田クリニック
○古澤洋一 中野紗希 高橋 梓 那須瑞志郎 奥田康輔

【目的】従来ESA製剤からエポエチンκへの切替えによる検討

【方法】当院維持透析患者でエポエチンβ(EPO)使用群57名、ダルべポエチンα(DA)使用群14名をBSに切替え、半年毎のデータを調査した。目標Hb値を10.0~11.5g/dLとし、投与薬剤を適宜増減した。検討項目はHb値・ESA投与量・鉄代謝関連検査とした。切替え効果は半年毎の平均ESA投与量で比較し、EPOは同単位量で、DAは2010年当会で報告したEPO→DA変更時の換算比1:258を用いた。対象はEPO継続群17名。統計解析はt‐検定でp<0.05を有意差有りとした。

【結果】BS切替えでHb値に有意差はなかったが、ESA投与量はEPO:4308U/w→BS:5160(p=0.037)で有意に増加、DA換算値:3802U/w→BS:4586(n.s)で有意差はなかったが増量傾向であった。切替え効果はEPOの力価を1とするとBSは0.83倍、DAに対しBSの平均換算比は1:312であった。対象のEPO継続群のEPO投与量は4449U/w→4793(n.s)で変化はなかった。

【結論】後発品BSは、従来品ESA(EPO・DA)と比較して、Hb値を維持するために、ESA投薬増量の必要性が示唆された。

当院における運動療法の取り組み 第1報
(医)開生会奥田クリニック
○新井和恵 高村キエ子 田崎まち子 阿久津素子
越井正太郎 古沢幸男 古澤洋一 奥田康輔
N・S・リンク 有田しのぶ

【背景】運動療法によって、生命予後やADL・QOLが向上する事は知られているが、運動習慣を定着させる事は重大な課題である。当院では多施設共同の運動習慣定着への取り組み(下野運動療法勉強会=STEC)に参加しており、その一環で2011年2月から、健康運動指導士の介入による、透析患者向けの運動療法を定期的に行ってきたので報告する。

【目的】透析患者の運動習慣定着

【方法】1.透析患者とスタッフの身体活動量調査。2.運動療法の実施と継続指導への声かけ。3.お花見ウォーキング。4.穿刺待ち時間の体操。5.定期的なスタッフ体操。

【結果】当院患者の身体活動量はスタッフ(平均33.3Ex/週)に比べ少なく、平均15.8Ex/週であった。患者で運動療法に係わった人は51名いた。穿刺の待ち時間を利用したストレッチ体操は1名だったが、現在は14名に増加し継続している。

【考察】運動療法の定着・継続するには、スタッフもレクリエーション的に楽しみながら、患者さんにアプローチし、成功体験を積ませ、進んで参加する意欲を持たせることが大切であると思われた。

当院における運動療法の取り組み 第2報
~車いすから自立歩行に至った症例~
(医)開生会奥田クリニック
○高村キエ子 小原梢 田崎まち子 阿久津素子 越井正太郎
古沢幸男 古澤洋一 新井和恵 奥田康輔
N・S・リンク 有田しのぶ

【背景】当院では2010年より多施設共同の運動習慣定着への取り組み(下野運動療法勉強会=STEC)に参加している。

【方法】2011年から月2回、健康運動指導士による、HD患者向けの運動療法を継続中、今回運動療法にてQOL・ADL向上を見た患者症例を報告する。

【症例】52歳 男性 原疾患:DM腎症 HD歴3年4ヵ月HD導入後右被殻出血による左完全麻痺で入院、リハビリ後、当院へ通院透析となった。左半身完全麻痺に近く、車いすの状態だったが、自立歩行にて外出したいという強い希望で健康運動指導士による介入を開始した。

【結果・考察】健康運動指導士の介入、スタッフの声かけで運動を継続し、車いすの生活から自立歩行が可能となり、一人で電車通院(眼科)や友人宅の外出が出来るようになった。現在は職場復帰を果たし、運動療法の効果を実感している。
運動を継続定着には、患者本人の明確な目的意識と患者の意欲を維持するための専門家、周りのスタッフの支援が大切である。