第60回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

20150706

第60回日本透析医学会学術集会が、6月26日(金)~28日(日)の3日間、横浜市で開催されました。
当院からは17名参加し、リハビリテーションのセッションの座長として奥田院長が出席しました。また、新規リン吸着剤のリン吸着効果・貧血改善効果・便秘改善効果について検査部と栄養部でそれぞれ1演題ずつ報告致しました。
発表後、参加者が横浜市内で夕食をとり、その後ランドマークタワーで横浜湾の魅力溢れる夜景の美しさに感動致しました。今回の学会参加で得た情報を今後の透析医療に反映させていこうと思います。

①透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の鉄動態への影響と貧血改善効果の検討
○古澤洋一、中野紗希、高橋 梓、大盛千恵、遠藤佳緒里、新井和恵、神山康子、小原 梢、高橋秀明、奥田康輔

【目的】鉄含有の新リン吸着薬,FCHの鉄動態影響と貧血改善効果の検討

【対象】当院維持透析患者37名(男性23名、女性14名)平均年齢:64.0±14.8歳、平均透析歴:12.8±11.5年(DM15名、非DM22名)ESA製剤を使用しており、1年以内に鉄剤使用歴のある高リン血症患者を対象とし、FCHを新規に開始、もしくは他のリン吸着剤から切り替えた。塩酸セベラマー、ビキサロマーで便秘がある患者、炭酸カルシウム3g/日以上内服している、または補正Ca9.0mg/dL以上の患者は積極的にFCHに切り替えた。

【方法1】FCH投与量は、750~1500mg/日と少量に留めた。リン吸着剤の切り替え方法
セベラマー(250)4T,ビキサロマー(250)4C,炭酸ランタン(250)1T,炭酸カルシウム(500)1T→FCH(250)2Tに切り替えFCH投与開始前と開始後1,2,4,6ヶ月の血清リン、補正Ca、iPTHの各測定値を検討。FCH各のリン吸着効果を検討するため、リン吸着剤の1日当たりの投与量を下記の方法でスコア化しその合計の経過を調査。

【結果】FCH投与前後半年間の検討では血清P,補正Ca,iPTHに有意差なし。リン吸着剤総合スコアに変動はなかった。TSAT,フェリチン、HbはFCH投与後有意に上昇した。その結果フェジン投与量は有意に減量出来た。ESA投与量はFCH開始1ヶ月より減量出来、2ケ月以降有意に減量出来た。副作用で37名中8名が中止した。内訳は下痢4名(10.8%)フェリチン上昇2名(5.4%)、Hb上昇2名(5.4%)であった。

【考察】血清リン濃度とリン吸着剤投与量総合スコアの経過に変動がなかったため、FCHのリン吸着効果は、切り替え設定相当の効果があったと考えられた。貧血改善効果は含有成分の第二鉄が影響し、ESA、フェジン投与量減量に繋がっていると考えられた。FCH少量投与に留めたにも拘わらず、フェリチン過剰となる患者もおり、鉄動態を十分にモニターする必要がある。

②透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の便秘改善効果の検討
○遠藤佳緒里、大盛千恵、新井和恵、神山康子、小原 梢、古澤洋一、高橋秀明、奥田康輔

【対象】①報告と同じ年齢、透析歴、人数、高リン血症患者で塩酸セベラマー、ビキサロマーで便秘がある、あるいは内服しにくい患者。または下剤を内服している患者に対し積極的に切り替えた。

【方法1】①報告と同じ
【方法2】FCHの内服前後の便秘状況をRomeⅡintegrativeアンケートにて数値化し比較。下剤量をアローゼン®1包、プルセニド®1錠、麻子仁丸®1包を各1点、ラキソベロン®10滴を各1点として数値化し比較。
また便秘改善効果がFCH自体によるものか、ポリマー系リン吸着剤の減量や中止によるものかを検証するために下記のA群、B群に分け比較検討した。
A群:ポリマー系リン吸着剤を減量または中止した群(N=11)
B群:ポリマー系リン吸着剤を変更していない群(N=18)

【結果】①報告と同じでリン吸着剤スコア、血清リン、補正Ca、iPTHにも有意差はなかった。FCH投与後全体の便秘スコアは1ヶ月以降低下傾向を示したが有意差はなかった。硬便スコアが開始2ヶ月目は有意に低下し、軟便化の傾向を示した。A群では便秘改善効果が見られたが、B群では期待された様な便秘改善効果は見られなかった。
【考察】FCHのリン吸着効果は①報告と同じ。ポリマー系リン吸着剤を内服し便秘を認める患者にとってはFCHに変更することによって、便秘改善効果を認めたが、FCH自体には期待された様な便秘改善効果は見られなかった。下痢等の腹部症状で継続が出来ない患者を10.8%認めたため、FCH投与する際には注意していく必要がある。

以上